最近、紙面を賑わしているヨーロッパ各国に押し寄せるシリア難民。
今、一体シリアで何が起こっているのか
今回はそれについて書いていきたいと思います。
問題のシリア内戦。発端は『アラブの春』という西アジア諸国で起こった民主化運動です。
当時、独裁政治体制にあったエジプト・チェニジアといった国々で、それに反対した市民が政権を倒すという事件があり、その動きが周辺諸国にも広がっていきました。
アサド政権による専制政治が行われていたシリアにも当然それが波及する事になります。
当時、シリア国内はスンニ派(74%)、アラウィ派(16%)、東方正教会(10%)という3つの宗派により構成されていました。人口的にはスンニ派がマジョリティを形成していますが、実際に国内で権力を掌握していたのは、アサド氏率いるアラウィ派でした。
国内で16%のアラウィ派が優遇され、その他が迫害されるという構図が成り立っていたのです。
シリア内戦の発端はこの歪な権力構造の是正が始まりだったのです。
しかし、国軍を持った政府軍と武器も無い国民では勝負になる訳がありません。それが、今でも続いているのはそれらを後押しする勢力が存在したからです。
具体的には、政府軍にはロシア・中国、国民軍にはアメリカ・欧州諸国という冷戦時と同じ図式になります。
紛争当初は純粋な内戦でしたが、次第に外部勢力が台頭する事により、もはや単純な内戦という状況から逸脱しつつあります。
その上、もう1つ問題を複雑にする存在があります。
それが中東の過激派組織イスラム国(IS)の存在です。シリア内戦に伴う権力の空白と、欧米諸国とロシア・中国との対立が泥沼化し有効な手立てが打てない状況の隙を突いて過激派集団が勢力を伸ばしたのです。
それにより、三つ巴による戦いは出口の見えない状況に陥ってしまいました。
現在、ISはシリア国内の過半数を掌握していると言われ、虐殺・レイプといった非人道的行為が繰り広げられる事も難民問題に拍車を掛ける結果となっています。
様々な利害を持った勢力が複雑に絡まり合った現在のシリア情勢は一筋縄では行きません。欧米・ロシア共に本格的に介入する気は無く、腰の引けた介入を続けた事によりISという新しいファクターの介入を許してしまいました。その間の死者は22万人、400万人を超える難民を産みました。
欧州に押し寄せるこれら難民は、経済危機に揺れる欧州諸国を確実に混乱に巻き込みます。欧州の危機はそのまま経済依存度の高い中国を巻き込み、米国、日本も影響を回避する術はありません。
ただ、残念ながら歴史的に見てもこのような危機に対し世界は無力です。戦後、このような国際問題に対し国連が機能した事は1度として無いからです。
国連に変わる新しい秩序の構築を熱望せずにはいられません。